東京カレッジ研究者 科研費(若手研究・特別研究員奨励費)に採択
東京カレッジ特任助教Xinyu Promio WANG氏、ポストドクトラル・フェロー細川 尚子氏、TSAI Hung Yin氏、Laur KIIK氏が、日本学術振興会の2023年度科研費(若手研究)に採択されました。訪問研究員Lidiya SHAMOVA氏が特別研究員奨励費を取得しました。
特任助教Xinyu Promio WANG氏のプロジェクトは、“Mechanisms of Self-Justified Discrimination: The Case of Trans Chinese in Japan”(差別を自己正当化するメカニズム:在日トランスジェンダー中国人事例を中心に)です。
研究概要:
本研究は、中国人トランス・ディアスポラを、日本での日常生活のエピソードに関連づけ、場所と場所のないことをどのように概念化するかを探るものである。既存の実証的な研究成果は、トランスジェンダー中国人が日中両国において社会的に疎外されていることを示している。しかし、ここで重要な問題が浮上した。それは、彼らの「場所」はどこにあるのか、そして、彼らはどのようにその「場所」を疎外と差別と関連するのかということである。人間の移動、デジタル的な連結性、そしてジェンダーとセクシュアリティの交差性に焦点を当てることで、本研究は上述した問いを解明することを目的とする。結果的に、あまり耳にすることのない、そして実際に無視されがちなトランスジェンダー移民の声を伝えるチャンネルとなることを目指す。
ポストドクトラル・フェロー細川 尚子氏のプロジェクトは、“Analysis of the EU Clear Language Initiative and Its Possible Application to Japanese Language Policy”(EUクリアランゲージ政策の成果の分析と「やさしい日本語」への応用の可能性)です。
研究概要:
本研究は、欧州における多言語主義に基づく言語政策の実施と成果を調査し、日本社会における適用の可能性を検討するものである。日本では近年、日本語を母語としない人にわかりやすい情報を提供するために、「やさしい日本語」の普及が進んでいる。このような取り組みをさらに発展させるために、本研究では、欧州の機関で導入されている「Clear Language」ガイドラインに着目した。このガイドラインは、英語などの共通言語を用いて、異文化コミュニケーションを促進することを目的としている。設立当初から多言語主義に取り組んできた欧州機関の事例で成果と課題を分析することは、国際化・多様化が進む日本の言語政策のあり方を理解する上で重要であると考えられる。
ポストドクトラル・フェローTSAI Hung Yin氏のプロジェクトは、“The Construction of Medicine v.s. Non-medicine: a Historical and Social Study of Herbs' Materiality and Knowledge Productions in the Local and Global Context”(薬と非薬の構築:ローカルおよびグローバルな文脈におけるハーブの物質性と知識生産に関する歴史的・社会的研究)です。
研究概要:
「薬とは何か?」、より具体的には、薬と非薬の二分法はどのように形成されるのか?これらの問いに答えるために、本研究は漢方薬のハーブに焦点を当てる。漢方薬のハーブの中には、現在ではサプリメントに分類されるものもあれば、薬に分類されるものもある。さらに、これらのハーブは、化学複合物の製剤と比べて「自然」で「ソフト」でありながら、病気を治療したり体の機能を向上させたりすると考えられている。こうした考え方から、二つのテーマが浮かび上がっている。一つは、私たちが当たり前のように捉えているがまだ研究が充分に行われていないハーブと自然との関係性。もう一つは、ハーブと人間強化の関係性である。人間強化はしばしばゲノム編集などの派手なテクノロジーと結び付けられ、私たちが日常的に「自然」の薬やサプリメントを摂取することによって人間の強化を実践していることは見過ごされてきた。本研究では、ハーブにまつわる語り、知識生産、サプライチェーンを調査し、何がハーブを薬あるいは非薬とするのか、そしてハーブを取り巻く自然と人間強化の概念を明らかにする。
ポストドクトラル・フェローLaur KIIK氏のプロジェクトは、“Between Ecology, Nationalism, and China: An Ethnography of Interconnections in War-Torn Burma's Kachin Region”(エコロジー、ナショナリズム、中国の狭間で: 戦乱のビルマのカチン地方における相互連結の民族誌)です。
研究概要:
地球規模の環境危機、高まるナショナリズム、そして中国の台頭は、それぞれに私たちの世界を変容させている。しかし、それらはどのように関連しているのだろうか。この研究では、中国とインドが交わるビルマ(ミャンマー)の長い戦争の背景にある、広範であるが研究が不足している地域におけるこれらの相互作用について明らかにする。本研究は、2010年以来、この国境地帯のカチン族を対象に私が続けてきたエスノグラフィーの研究を土台とするものである。
訪問研究員Lidiya SHAMOVA氏のプロジェクトは、“The Music of the Words”(言葉の音楽)です。
研究概要:
本研究は言語学と音楽に関する学際的研究である。その目的は、音楽的な記号で単一次元、二重次元、多次元の語彙領域を表現する手段を用いて、独自の言語モデルを作成することである。3つの語彙場からなる言語モデルのプロトタイプを作成し、それを音楽記号とハーモニーにマッピングする予定である。このモデルを言語や文化的背景に跨ってテストするための調査を、さまざまな国の被験者に実施する予定である。このモデルは、現代の言語教育学、言語文化学、そして音楽学、音楽療法、言語療法のさまざまな分野において応用される。また、教育実践、音楽制作、文章作成、医療や心理療法、そして日常生活のさまざまな分野で、新たな道を切り開くことができるだろう。本研究は、バイリンガリズムや多文化主義の分野と密接に関連しているため、国際コミュニケーションの向上に貢献することができる。私の目標は、言葉の音楽という分野における学際的な発展を通じて、このテーマに注意を喚起することである。
「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文学、社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる『学術研究』(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする『競争的研究資金』であり、ピアレビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うものです。」(日本学術振興会公式ウェブサイトから引用)
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