東京カレッジ講演会「地球規模の環境問題に挑む」講師:李遠哲 - 東京カレッジ

東京カレッジ講演会「地球規模の環境問題に挑む」講師:李遠哲

日時:
2019.11.27 @ 17:00 – 18:30
2019-11-27T17:00:00+09:00
2019-11-27T18:30:00+09:00

東京カレッジ講演会「地球規模の環境問題に挑む」が開催されました

2019年11月27日、1986年ノーベル化学賞受賞者である李遠哲教授(台湾中央研究院名誉院長、元国際科学会議会長)による講演会「地球規模の環境問題に挑む」が開催されました。

人間社会の登場と発展

中村尚教授(先端科学技術研究センター)が司会を務め、先端科学技術研究センター所長の神崎亮平教授が開会の挨拶を行いました。続いて、李教授は、地球の発展やその上に存在する人間や他の生物にとって太陽が極めて重要であることを論じました。人間は気候の安定性をきっかけに、農業を発見しました。農業の発展と共に人間社会が作られましたが、工業革命の影響で、人間は太陽のエネルギーよりも石油などの化石燃料を使用するようになりました。太陽との関係が切れたように思われる人間社会は、消費が増加し、地球に大きな負担を与えることになりました。70年代からオゾン破壊が始まり、現在、人間が地球に与えた影響は大気汚染にはっきり見られます。李教授は、地域の問題として石炭を燃やさないようにするだけでは不十分で、国際的な問題として二酸化酸素、グリーンハウスガスに注意を払うべきと主張しました。

地球規模の環境問題への挑戦

李教授は、工業革命後、地球と人類の関係が切られ、人間と人間の繋がりも断ち切られたことに警鐘を鳴らしました。持続可能な発展を考えるならば、エネルギーの消費を減らし、ソーラーや風力発電への転換を真剣に検討するべきと言います。しかし、世界中どこでもソーラー電力を利用できるとは限りません。国際市場で太陽のエネルギーを販売したとき、人口密度によって利益に差が出ないようにするには、結局国境を越えた繋がりを持つことが解決策となります。このように、李教授は、人間社会における繋がりと、エネルギーや利益の分配が関係していることを論じました。

次に、先端科学研究センター教員らがコメントしました。高機能材料専門の近藤高志教授は、ペロブスカイト太陽電池という材料の性能や特徴を紹介しました。エネルギーシステム専門の杉山正和教授は、デバイスと共にシステムを変化させるべきであると述べました。太陽電池、風力発電水と共に、水素に頼るシステムを考えるべきと言います。気候変動科学専門の中村尚教授は、地球温暖化と異常気象(夏の気温や水蒸気の変化、強い雨、海の温暖化)について紹介しました。

QA

質疑応答セッションでは、発生してしまったCO2を効果的に処理する方法は何か、CO2の濃度と温暖化の関係性はあるのか、一般市民を含める行動について一番重要な対策は何か等、フロアから多岐に渡る質問が寄せられました。登壇者は、新たなエネルギー開発だけでなく、市民を含めて消費を減らすことについても議論し、最後に国際協力の大切さも指摘されました。

終了しました
開催日時 2019年11月27日(水)17:00-18:30
会場

東京大学・ENEOSホール(駒場IIキャンパス 先端研 3号館南棟1階)

申込方法 事前申込制。150名(先着順、参加無料)
言語 日本語(日英同時通訳有)
要旨

地球温暖化がもはや制御不可能なほど深刻な状況になってしまったツケを、私たちは次世代に回そうとしています。温暖化ガスの排出を2050年までにゼロにするため、クリーンで再生可能なエネルギーや大気中のCO2を効率的に固定する技術の開発が科学者に期待されていますが、この極端な異常気象や他の多くの環境問題の深刻化の流れの反転を阻む大きな要因は、それを達成しようとする政治的な意思と財政的コミットメントの欠如です。望ましい世界の実現のために私たちに何ができるのか、本講演でご提言いただきます。

主催 東京大学先端科学技術研究センター / 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tcevent@graffiti97.co.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

GPAI 仕事の未来:Future of Work Survey Report 2024

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion

2025年3月13日(木)16:00-18:00

2020年6月に設立されたGPAI(Global Partnership on AI、AIに関するグローバルパートナーシップ)は、「人間中心」の考えに基づく責任あるAIの開発と使用に取り組む国際的なイニシアティブである。このGPAIに設置された作業部会の一つ「仕事の未来(Future of Work)」では、職場にAIが導入されていく中、どのように私たちの働き方が変化していくのかについて国際的なインタビュー調査を世界各国で実施しており、そのユニークな特徴は、これから未来を担っていく学生達が参加して企業インタビューを実施している点にある。本イベントは、本国際調査の一環として日本で実施した調査について、概要と成果を国内外に発信することを目的とする。2021年度、2022年度、2023年度に続いて今年度に行われた調査の概要を紹介し、実際にインタビューに関わった学生や教員より調査から分かった「仕事の未来」や、調査法の可能性と今後の展開について議論する。

デジタル時代の 教育と 科学の役割(ユヴァル・ノア・ハラリ)

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion共催/Joint Event

2025年3月17日(月)15:00-16:30(14:00開場)

今日、デジタルネットワークは私たちに膨大な情報を 提供しています。特に教育や科学の分野ではかつて ない規模となっています。しかし、これらの成果にもか かわらず、私たちの精神的、社会経済的、政治的状況 は改善されていません。むしろ、それらは悪化してい るように見えます。何が間違っているのでしょうか? 私たちは何をどう改善すべきなのでしょうか? 過去 の情報革命から、私たちは何を学べるのでしょうか? メディアとAIガバナンスの分野で活躍する日本の 2人の著名な研究者が、世界的に有名な思想家で ベストセラー作家であるユヴァ ル・ノア・ハラリとともに、情 報時代のリスクとチャンスに ついて新著『NEXUS 情報の 人類史』をもとに議論します。

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか3

イベント予定講演会/Lecture

2025年3月19日(水)12:00-13:00

東京大学では2024年12月11日にEU-AI法の解説とCoPの第一ドラフトの解説、2025年1月15日に第二ドラフトの解説を行いました。本ウェビナーでは最後となるCoP第三ドラフトについての解説と、日本企業が特に留意すべき重要なポイントについて概説します。

黒死病の世界:新たなアプローチ(講演者:Patrick BOUCHERON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月16日(水)10:00-11:30

1347年からヨーロッパに広がった第二次ペスト大流行は「黒死病」と呼ばれ、史上最大の人口災害として知られている。今日では、葬送考古学、人類学、微生物学、環境科学を組み合わせた学際的研究により、ペスト研究のアプローチは大きく変容した。DNA分析や気候研究の進展は新たな理解をもたらしたが、長期的で世界規模の出来事をどのようにしてグローバル・ヒストリーとして叙述すべきか、という課題は残されている。ペストの流行経路は世界のつながりを示すが、その正確な地理は依然として不明瞭である。そはまるで群島のように不連続でありながらもグローバルな広がりを持つ。

Previous Events

公開済みイベント

グローバル・ブランドとしての日本語:「ヨーロッパ風」に書かれる日本語とは(講演者:Viktoria ESCHBACH-SZABO教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年3月4日(火)15:00-16:30

この講義では、日本語が、国境を越えた日本のグローバル・ブランディングに与える影響を探り、独特のイメージ、文化的意義、信憑性を呼び起こすために、日本語がどのように戦略的に用いられているかを検証する。また、重要な世界言語としての日本語の在り方の現状と、今後の研究の方向性についても洞察する。ドイツとハンガリーにおける言語学的ケーススタディを用いて、日本語表記がどのように言語的に再構成され、製品のアイデンティティや日本らしさを呼び起こすデザインと組み合わされているのかを明らかにする。海外の新たな文脈に創造的に適応された日本語は、ヨーロッパにおいて強力なブランディング・ツールとなっている。

日本の過去を再考する:通史の改訂と歴史の修正(講演者:Andrew GORDON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年2月27日(木)15:00-16:30

過去というのはまるで異国だと言われており、歴史家は現代の価値観を押し付けることなく過去を理解しようとする。しかしながら、歴史叙述とは、必然的に過去と現在の対話を行うことである。本講演では、これまでA Modern History of Japanを4版執筆し、現在5版の執筆を検討中の著者が、25年にわたる内的対話を紹介する。

イギリスの対中認識と対日政策 ー 2010-2024年(講演者:Alastair MORGAN潮田フェロー)

イベント予定講演会/Lecture

2025年2月18日(火)15:00-16:30

保守党率いるイギリス政府の中国に対する認識は、2010年から2024年にかけて大きく変化しました。2010年、デーヴィッド・キャメロン首相は中国の台頭を機会と捉えていました。しかし、10年後には、政府は中国をイギリスの経済安全保障に対する最大の長期的脅威とし、海外での中国の自己主張に対する懸念が高まっていると表明しました。この期間に、イギリスと日本はますます密接な安全保障関係を築きました。イギリス政府の中国に対する認識がこの期間の日本への政策を決定付けたのでしょうか、それとも他の要因も同様の影響力があったのでしょうか?新しい労働党政府からはどのようなアプローチが期待されるのでしょうか?

日常の「外交官」: 分断された世界で混沌をつながりに変える(講演者:Annelise RILES教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年2月13日(木)10:00-11:30

Annelise RILESは、新著『Everyday Ambassadors』で、私たちは今、リーダーシップが少数の手にあるのではなく、すべての人の手にあるエキサイティングな新世界秩序の瀬戸際にいると主張する。世界に今必要なのは、政治的、文化的違い、科学と宗教、芸術とテクノロジーの世界の間の橋渡し役であり、翻訳者、通訳者など、より多くの外交官であると提唱している。本講演では、RILES教授が、数十年にわたる法律と民族誌の研究をまとめ、誰もがどこにいても優れた外交官になるための 7 つの「行動」をまとめた著書について語る。

不滅の知性とDNAに依存しない人類の台頭(講演者:Johan BJÖRKEGREN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年1月29日(水)15:00-16:30

約6万年前、人類がアフリカからの移住に成功した頃、ある変革が起こった。ホモ・サピエンスは、自然資源を巡る競争能力を根本的に変える重大なDNA変化を経験したと考えられる。この変化にとって重要だったのは、抽象的思考の獲得であった。そして今日、AIの発展により、ダーウィンの「適者生存」の原則から最終的に脱却する段階に差し掛かっている。我々はDNAへの依存から完全に解放されることで、さらには死すらも克服する方向へ急速に進化しつつある。

性暴力はなぜ繰り返されるのか:背後の社会規範を問う(講演者:大沢 真知子教授)

イベント予定共催/Joint Event講演会/Lecture

2025年1月21日(火)14:00-15:30

声を上げる被害者によって性被害の実態が明らかになりつつある。にもかかわらず性加害が繰り返されるのはなぜなのか。本講演では、2022年にNHKが実施した性暴力実態調査アンケートによって回収された38383件の被害者のデータを元に性被害者の実態を明らかにするとともに、日本社会には強姦神話が存在し、それによって被害者が責められるさらに苦しむという構造がある。背後には男女不平等社会をもたらす社会の男性規範があり、性加害をなくすためには、社会規範を問い直す必要がある。


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