平和、安全保障と人工知能 - 東京カレッジ

平和、安全保障と人工知能

日時:
2024.07.12 @ 14:00 – 15:00
2024-07-12T14:00:00+09:00
2024-07-12T15:00:00+09:00
平和、安全保障と人工知能
終了しました
Zoomウェビナー
開催日時 2024年7月12日(金) 14:00-15:00
会場

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申込方法 事前申込制
言語 英語
要旨

人工知能(AI)システムの両用性と再利用可能性は、分野やセクターを超えた根本的な課題をもたらしている。技術が悪意を持って使用されたり、誤用されたりして、国際的な平和と安全に対する脅威となる可能性がある。これらの用途の中には、標的の選択や武力行使の関与といった自律的な武器機能が懸念されるが、意思決定支援システム、データ収集、個人の特定、情報や誤情報の生成といった武器に関連しない機能についても懸念される。さらに、AIの兵器化が進み、生物兵器、核兵器、化学兵器、ドローン群などの大量破壊兵器と融合することは、人類に極めて大きなリスクをもたらす。

 

いずれにせよ、このような懸念はより広い安全保障の領域に広く存在するため、軍事的な領域に限定するのは視野が狭い。というのも、軍隊が使用する技術は、紛争地域でも非紛争地域でも、法執行機関や国境管理当局など他の国家機関が平時にも同様に使用することができるからである。加えて、いったん開発されれば、こうしたテクノロジーへのアクセス、複製、配備が容易になる可能性もある。その結果、テロ集団や組織犯罪などの非国家主体が悪意を持ってこれを利用し、国家の主権を損ない、国家、地域、あるいは国際的な平和と安全を脅かす可能性がある。

 

そこで、本講演では、上記のような広範なセキュリティ領域にわたってAIシステムがもたらす固有のリスクについて掘り下げ、最後に、これらの技術に関連するリスクを防止・軽減するためのガバナンス・モデルの提案について、いくつかの知見を紹介する。その中には、拘束力のある規範、基準、ガイドラインを精緻化する必要性や、これらの規制を実施し、説明責任、被害に対する救済措置、緊急対応を通じてコンプライアンスを確保する適切なメカニズムを備えた一元化された当局を通じた監視、モニタリング、検証、検証機能の必要性が含まれる。

プログラム

講演者

ヒメナ・ソフィア・ビベロス・アルバレス(メキシコ最高裁判所ロレッタ・オルティス判事首席補佐官兼法律顧問)

司会

江間有沙、東京大学東京カレッジ 准教授

 

14:00-14:40 講演(40分)ヒメナ・ソフィア・ビベロス・アルバレス(メキシコ最高裁判所ロレッタ・オルティス判事首席補佐官兼法律顧問)

14:40-15:00 ディスカッション、質疑応答

 

講師プロフィール

ヒメナ・ソフィア・ビベロス・アルバレスは著名な弁護士・学者であり、人工知能(AI)に関する国連事務総長ハイレベル諮問機関のメンバーとして、AIのグローバル・ガバナンスに関する提言を推進する任務を担っている。また、軍事分野における責任あるAIに関する世界委員会(GC-REAIM)の委員、経済協力開発機構(OECD)のAI専門家として、AIのリスクと説明責任に関する作業部会やAI事件に関する部会に参加している。メキシコでは、ロレッタ・オルティス・アルフ最高裁判事の首席補佐官兼法律顧問を務めており、以前は連邦司法審議会でも同職を務めていた。

 

安全保障・市民保護省、連邦税務・財務検察庁で国家指導的地位に就き、長官を務めた。国際的には、国際刑事裁判所、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所、ルワンダ国際刑事裁判所、化学兵器禁止機関、FARC武装解除のための国連コロンビア検証団に勤務。また、ケニア、カンボジア、パレスチナのNGOに加え、レバノンの最高裁判所にも勤務。

 

AIや自律型兵器システムに関する著書が多く、主な著書に以下のものがある:Autonomous Weapons Systems: The Accountability Conundrum」メキシコ国立自治大学法律研究所より2021年に英語とスペイン語で出版)、「The Ultimate and Perhaps the Last Paradigm Shift – Artificial Intelligence」(ウォルターズ・クルワー社より2021年に英語とスペイン語で出版);AI and the International Responsibility of States(2022年、メキシコ国立自治大学法律研究所発行、スペイン語)、「Autonomous Weapons Systems and the Use of Force2023年、Ethics Press発行、英語)、「Weapons of Mass Destruction as Drone Swarms(2024年4月、Opinio Juris発行、英語)など。また、他の法律分野でも著名な執筆者である。

 

メキシコシティにあるイベロアメリカ大学で法学士号を取得後、ライデン大学で国際公法学の法学修士号を取得。現在、ケルン大学にてクラウス・クレース博士の指導のもと、AIと自律型兵器システムが国際平和安全保障法と政策の枠組みに与える影響について、さまざまな法的観点からグローバル・ガバナンスを実現するための具体的な提案とともに博士論文を執筆中。

主催 主催:東京大学東京カレッジ、東京大学未来ビジョン研究センター

 

共催:東京大学科学技術イノベーション政策の科学(STIG)教育・研究プログラム
お問い合わせ tg-event@tc.u-tokyo.ac.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

個人主義の国・日本(講演者:John LIE教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月26日(火)13:00-14:30

欧米諸国の「個人主義」に対して、日本社会は「集団主義」あるいは「集団志向」であると言われている。しかし、この説は間違いである。本講演では、通説に反論した後、この誤った考え方の系譜をたどり、その妥当性について論じる。

見えざるジェンダーから見えるジェンダーへ(講演者:岡田 トリシャ教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年12月6日(金)15:00-16:30

本講演では、1980年代から2000年代初頭までの日本におけるフィリピン人トランス女性またはトランスピネイの移住経緯(移住前・中・後)に関するエスノグラフィ研究を取り上げる。交差的不可視性(Purdie-Vaughns & Eibach, 2008)の枠組みから、フィリピン人トランス女性の移住体験を、トランスジェンダー移住者が現在直面している問題の事例と関連づける。また、ソーシャルメディアや映画が、いかにしてジェンダーの(不)可視性を示し、交渉する場を作り出しているのかについても探求する。

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか

イベント予定講演会/Lecture

2024年12月11日(水)12:00-13:00

本ウェビナーでは、EU-AI法の概要と行動規範の策定における4つのワーキンググループ活動、さらに日本企業が特に留意すべき重要なポイントについて概説します。
EUの規制動向がもたらす「ブリュッセル効果」や日本への影響について理解を深める機会としてAI関連技術の開発・提供・流通に関わる企業、研究機関、開発コミュニティの参加者のご参加をお待ちしております。

発展途上国の環境問題:課税の役割とは?(講演者:Michael KEEN潮田フェロー)

イベント予定講演会/Lecture

2024年12月11日(水)10:30-12:00

多くの低所得国は深刻な環境問題に直面している。よって、社会のニーズと経済発展に資金を提供するための税収が喫緊の課題となっている。環境税は、その両方の目的を満たせるのか。この講義では、最近出版された書籍を参考にしながら、低所得国が直面する多くの環境問題のうち最も差し迫った問題(大気・土壌の質、廃棄物管理、森林破壊、渋滞、気候変動への適応など)を評価し、税制の改善がそれらの問題への対処と多額の税収の引き上げにおいて、どの程度役立つかについて検討する。

駐日ジョージア大使に聞く 「内から見た日本、外から見た日本」

イベント予定対話/Dialogue

2024年12月13日 17:00以降視聴可能

日本文化や日本のビジネス慣習に深い知見と洞察を持つティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使と、海外から日本を多角的に研究してきた、グローバル外交史の専門家である島津直子教授が、東京カレッジの主要な研究テーマの一つである「内から見た日本、外から見た日本」について議論します。
ご一緒にお楽しみください。

ザ・サロン ー 東大教授との対話シリーズ シーズン3

イベント予定対話/Dialogue

12月2日以降 毎週月曜日 順次公開(17:00以降視聴可能)

東大の文系の卓越研究者をゲストに迎え、東京カレッジの島津直子教授と、東京カレッジに滞在中のUCバークレーのJohn Lie教授がホスト役を務める対談シリーズ。専門分野の壁を超えた対話を繰り広げます。
隣の席に座った気分で、分野の異なる専門家によるリラックスした会話に耳を傾けてみませんか?

Previous Events

公開済みイベント

競合からパートナーへ:銀行によるフィンテックへのベンチャー投資(講演者:Manju PURI教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月12日(火)10:30-12:00

銀行がフィンテックとの競争を乗り切るための戦略的アプローチとして、フィンテックの新興企業へのベンチャー投資を活用しているという仮説のもとに、その根拠について検討を行う。これまで、銀行のベンチャー投資がフィンテック企業により重点を置いていることが明らかにされている。その結果、フィンテックとの競合が激化している銀行においては、フィンテックの新興企業にベンチャー投資をする可能性が高いことが示唆される。さらに、銀行は、自社の事業と資産の補完性が高いフィンテック企業をターゲットにしていることが証された。よって、操作変数分析により、ベンチャー投資が投資銀行とフィンテックの投資先との間で業務上の協力や知識移転が行われる可能性が高まることが理解できる。

多文化・多言語対応の安全な大規模言語モデルの構築を目指して

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月11日(月)10:00-11:00

生成人工知能(AI)の利用が世界的に広まるにつれ、AIモデルが地域ごとの文化や言語におけるリスクや懸念を敏感に反映できることがますます重要になっています。そのためには、何がリスクや有害なコンテンツなのかを地域・文化ごとに特定する作業を更新し続けていくことが必要となります。この作業には、AIや情報セキュリティの研究者はもちろん、人文・社会科学の研究者、AIやメディアのプラットフォーマー達や実務家の方や政策関係者たちと継続的に議論できるコミュニティを形成していくことが重要となります。本イベントでは、このようなコミュニティを継続させていく枠組みについてお話します。

新内閣の経済政策: ウィッシュリストと展望

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion共催/Joint Event

2024年11月8日(金)8:00 - 9:15

自民党総裁選挙(9月27日)と衆議院議員選挙(10月27日)の2つの選挙が行われ、新しい首相が選出された。この2回の選挙では、多くの経済政策案が提示され、議論された。ウェビナーでは、採用される可能性の高い経済政策と、採用される可能性は低いが日本経済にとって望ましい経済政策について議論する。

ロボットを「殺す」50の方法(講演者:Jennifer ROBERTSON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月5日(火)10:30-12:00

タイトルの「50 Ways」という言葉は、文字通りの尺度として捉えるべきではない。「50」は、単に「いくつか以上の数」を表す比喩である。ポール・サイモンのヒット曲「恋人と別れる50の方法」(1975年)では、6つの別れ方が提示されている。本講演では、ロボットを「殺す、終わらせる」ためのいくつかの方法と、ロボットが「死ぬ」いくつかの方法を検討する。ここで言う「死」とは、生命維持機能が永続的に停止することを広く定義している。また、「死亡した」ロボットがどのように処理されるかについても考察する。文化的な焦点は主に日本と米国である。人間もロボットも、いくつかの点で電気的な存在であるため、結論では、電気の供給が途絶えた後にそれぞれに何が起こるのかという問題を取り上げる。

東アジア・東南アジアのアイドル・ファンダム文化におけるクィア・ファンタジーの探求(講演者:Thomas BAUDINETTE氏)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月1日(金)14:00-15:30

本講演では、東アジアの確立されたアイドル市場(日本と韓国)と東南アジアの新興アイドル市場(フィリピンとタイ)の両方におけるアイドル・ファンダムの10年以上にわたるエスノグラフィックな観察をもとに、アイドル・ファンダムに関するこの説明に異議を唱える。そして、ファンの主観性が基本的に変容的であることが、周縁化された社会的主体が自分たちを不利にする社会構造を批判するために利用できるアイドルと結びついたクィア・ファンタジーの創造を促すことを主張する。さらに本講演では、アジア全域のLGBTQ+のファンが、アイドルのファンダムをどのようにクィアな空間へと変容させ、そこで彼らのファンタジー作品が、クィア解放という政治的プロジェクトに根ざした国境を越えた連帯を生み出しているのかを解き明かす。

日本におけるクィア人口学――西洋を前提に普遍化されたジェンダー・セクシュアリティに関する知を脱中心化する(講演者:平森大規 教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年10月24日(木)15:00-16:30

本講演では、日本の文脈を考慮に入れつつ、無作為抽出調査で性的指向・性自認を測定するための方法論的研究から得られた知見を紹介する。また、異性愛者の回答者が非異性愛者として誤分類される問題や、量的データにおいて異性愛者と非異性愛者を完全に分けることの難しさについても考察する。さらに、量的調査の性別欄において、ノンバイナリー回答者を捉えるために選択肢「その他」を用いることがあるが、性別を「その他」と選んだ回答者の半数はシスジェンダー女性である可能性があるという最新の調査結果について最後に述べる。


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