東アジア・東南アジアのアイドル・ファンダム文化におけるクィア・ファンタジーの探求(講演者:Thomas BAUDINETTE氏)
開催日時 | 2024年11月1日(金)14:00-15:30 |
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会場 |
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申込方法 | 事前申込制 |
言語 | 英語のみ |
要旨 |
「アイドル」として知られる有名人の生産と消費を探求する学術文献の多くは、アイドル・ファンダムがいかに搾取に適した消費者集団を生み出すかを強調してきた。この学問の関心事のひとつは、アイドルの生産において、主体を周縁化させ、政治的主体性が著しく低下した受動的な消費者へと変容させるヘテロ・パトリアリズムのイデオロギーを指摘することである。つまり、アイドル・ファンダムは、往々にして資本主義的蓄積を強化するポスト・フェミニズム的消費慣行が前提となっており、それゆえに女性やLGBTQ+の消費者の政治的権利を奪う一因となっていると理論化されている。本講演では、東アジアの確立されたアイドル市場(日本と韓国)と東南アジアの新興アイドル市場(フィリピンとタイ)の両方におけるアイドル・ファンダムの10年以上にわたるエスノグラフィックな観察をもとに、アイドル・ファンダムに関するこの説明に異議を唱える。そして、ファンの主観性が基本的に変容的であることが、周縁化された社会的主体が自分たちを不利にする社会構造を批判するために利用できるアイドルと結びついたクィア・ファンタジーの創造を促すことを主張する。さらに本講演では、アジア全域のLGBTQ+のファンが、アイドルのファンダムをどのようにクィアな空間へと変容させ、そこで彼らのファンタジー作品が、クィア解放という政治的プロジェクトに根ざした国境を越えた連帯を生み出しているのかを解き明かす。この議論を通して、「クィア・ファンタジー・ワーク」を、より平等主義的で希望に満ちた世界を積極的に生み出すためにデザインされた、現代アジア文化における明確な政治的力として、アイドル・ファンダムと結びつけて理論化する。 |
プログラム |
講演 コメント 司会 |
講師プロフィール |
Thomas BAUDINETTE (博士) オーストラリア、マッコーリー大学上級講師。文化人類学者であり、東アジアおよび東南アジアにおけるジェンダーとセクシュアリティに関する知識の形成にポピュラーカルチャーが果たす役割を研究している。著書に『Regimes of Desire: Young Gay Men, Media, and Masculinity in Tokyo』(ミシガン大学出版、2021年)、『Boys Love Media in Thailand: Celebrity, Fans, and Transnational Asian Queer Popular Culture』(ブルームズベリー出版、2023年)がある。最近、Academy of Korean Studiesの資金提供プロジェクト「Exploring K-pop Fandom as a Space for LGBT Support in the Asia-Pacific During Pandemic Times」(AKS-2022-R033)の遂行を完了した。現在、3冊目の著書となる『Queer Fantasies of Asia: Japanese and Korean Media Fandom in the Philippines』(仮題)を執筆中。 |
主催 | 東京大学国際高等研究所東京カレッジ |
お問い合わせ | tokyo.college.event@tc.u-tokyo.ac.jp |