連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」③価値 - 東京カレッジ

連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」③価値

日時:
2020.06.25 @ 15:30 – 17:00
2020-06-25T15:30:00+09:00
2020-06-25T17:00:00+09:00
連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」③価値

東京カレッジ連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」において、価値をテーマとしたオンラインシンポジウムが6月25日(木)に開催されました

はじめに本シンポジウムの前提として、人類の歴史を通して感染症による危機に直面するたびに価値についての反省を迫られていることが挙げられました。それは感染症が、既知の、しかし手をつけることのできなかった諸問題をあぶり出し、意志決定を含めた新しい社会のあり方をどのように構想し、人間の生の価値をどう深めていくのかを問うものであるためです。

本シンポジウムでは、武田将明准教授(総合文化研究科)、小野塚知二教授(経済学研究科)、宇野重規教授(社会科学研究所)が、上述の問題提起をめぐり、それぞれ専門分野から、「デフォーの『ペストの記憶』」、「危機」、「民主主義」というキーワードを用いて講演しました。その後、中島隆博(東洋文化研究所教授)がモデレーターとして加わり、総合討論が行われました。総合討論では、とりわけ生命の価値や、政治責任、科学性等の問題に着目し、バイオポリティクス(生政治)に陥らない方法でデモクラシー(民主主義)を再定義していくべきと提起されました。「価値」をテーマとする本シンポジウムでの議論は、これからの社会のあり方を構想する想像力を高め、人間の「生(ライフ)」の価値を深めていく手かがりとなるでしょう。

 

 

終了しました
YouTubeライブ配信
開催日時 2020年6月25日(木)15:30-17:00
会場

東京カレッジYouTubeチャンネル ( https://youtu.be/0OAfFKNJmSk )

言語 日本語(Japanese language only)
要旨

コロナ危機とその後の世界を考える際に重要な6つのテーマを設定し、それぞれについて専門家同士が座談会形式で討議する連続シンポジウム「コロナ危機を越えて」③価値

人類の歴史を振り返ると、感染症による危機を経るたびに、わたしたちは価値について反省を迫られている。感染症は、既知の、しかし手をつけることのできなかった諸問題をあぶり出し、意志決定を含めた新しい社会のあり方をどう構想し、人間の生の価値をどう深めていくのかを問うからである。ここでは、17世紀のペスト、20世紀の世界大戦と「スペイン風邪」、そして現在のcovid-19を通して、この問題をともに考えてみたい。

プログラム

コーディネーター:中島隆博(東洋文化研究所教授)

登壇者:小野塚知二(経済学研究科教授)、武田将明(総合文化研究科准教授)、宇野重規(社会科学研究所教授)

YouTubeライブ配信➤ https://youtu.be/0OAfFKNJmSk

 

小野塚知二「現下の疫病禍(COVID-19)の世界史的位置」

「危機」という言葉はしばしば安売りされ、氾濫しがちです。とはいえ、わたしも今般のCOVID-19ウイルスによる疫病禍は危機であると考えています。では、それはいかなる意味で危機なのかを、歴史研究者の観点と知見を活かして論じてみましょう。そのために、1930年代の大恐慌、約百年前の第一次世界大戦と「スペイン風邪」、さらに14世紀のペストなど史上さまざまな危機を振り返りながら、時代の転換点と次代の構想(あるいは「後継者」・「代替措置」)の有無との関係に論及しながら、今般の疫病禍の危機の重層性を明らかにします。 

 

武田将明「コロナウイルス時代にデフォー『ペストの記憶』を読む」

『ロビンソン・クルーソー』(1719)の作者ダニエル・デフォーは、小説家であると同時に有能なジャーナリストであり、おそらくそこまで有能ではない商人でもあった。そんな彼の素質が見事に発揮されたのが、『ペストの記憶』(1722)である。1665年にロンドンを襲ったペストの被害と市民生活、行政の対応を記述した本書は、実際のできごとの記録であると同時に、フィクションの要素も多分に含んでいる。デフォーによる疫病の記述は、しばしば現代のコロナ流行下の社会を彷彿とさせるが、本発表では単なる事実の一致にとどまらず、疫病が市民社会にもたらす困難の本質と、そこから浮上する社会的、倫理的な問題について、デフォーと共に考えてみたい。その結果、文学によって災害を記録し、記憶することの意味に迫ることができればとも思っているが、そこまで大風呂敷を広げずとも、コロナ問題を考える上での一本の補助線を提供できれば幸いである。

 

宇野重規「安全・経済・自由のトリレンマ」

コロナ危機は、安全・経済・自由のトリレンマ状況を我々に示した。すべての人々の生命を守ることが最重要であることは言うまでもないが、同時に、危機が継続する中で、いかに経済活動を維持・再開するかも重要な課題となる。さらに、そのいずれをも通じて、個人の自由やプライヴァシー、平等や社会的公正をいかに尊重するかも問われる。すべてを同時に満たすことができないとき、いかにして政治的決定は行われるべきだろうか。

主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ

Upcoming Events

開催予定のイベント

個人主義の国・日本(講演者:John LIE教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月26日(火)13:00-14:30

欧米諸国の「個人主義」に対して、日本社会は「集団主義」あるいは「集団志向」であると言われている。しかし、この説は間違いである。本講演では、通説に反論した後、この誤った考え方の系譜をたどり、その妥当性について論じる。

見えざるジェンダーから見えるジェンダーへ(講演者:岡田 トリシャ教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年12月6日(金)15:00-16:30

本講演では、1980年代から2000年代初頭までの日本におけるフィリピン人トランス女性またはトランスピネイの移住経緯(移住前・中・後)に関するエスノグラフィ研究を取り上げる。交差的不可視性(Purdie-Vaughns & Eibach, 2008)の枠組みから、フィリピン人トランス女性の移住体験を、トランスジェンダー移住者が現在直面している問題の事例と関連づける。また、ソーシャルメディアや映画が、いかにしてジェンダーの(不)可視性を示し、交渉する場を作り出しているのかについても探求する。

発展途上国の環境問題:課税の役割とは?(講演者:Michael KEEN, 潮田フェロー)

イベント予定講演会/Lecture

2024年12月11日(水)10:30-12:00

多くの低所得国は深刻な環境問題に直面している。よって、社会のニーズと経済発展に資金を提供するための税収が喫緊の課題となっている。環境税は、その両方の目的を満たせるのか。この講義では、最近出版された書籍を参考にしながら、低所得国が直面する多くの環境問題のうち最も差し迫った問題(大気・土壌の質、廃棄物管理、森林破壊、渋滞、気候変動への適応など)を評価し、税制の改善がそれらの問題への対処と多額の税収の引き上げにおいて、どの程度役立つかについて検討する。

駐日ジョージア大使に聞く 「内から見た日本、外から見た日本」

イベント予定対話/Dialogue

2024年12月13日 17:00以降視聴可能

日本文化や日本のビジネス慣習に深い知見と洞察を持つティムラズ・レジャバ駐日ジョージア大使と、海外から日本を多角的に研究してきた、グローバル外交史の専門家である島津直子教授が、東京カレッジの主要な研究テーマの一つである「内から見た日本、外から見た日本」について議論します。
ご一緒にお楽しみください。

ザ・サロン ー 東大教授との対話シリーズ シーズン3

イベント予定対話/Dialogue

12月2日以降 毎週月曜日 順次公開(17:00以降視聴可能)

東大の文系の卓越研究者をゲストに迎え、東京カレッジの島津直子教授と、東京カレッジに滞在中のUCバークレーのJohn Lie教授がホスト役を務める対談シリーズ。専門分野の壁を超えた対話を繰り広げます。
隣の席に座った気分で、分野の異なる専門家によるリラックスした会話に耳を傾けてみませんか?

Previous Events

公開済みイベント

競合からパートナーへ:銀行によるフィンテックへのベンチャー投資(講演者:Manju PURI教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月12日(火)10:30-12:00

銀行がフィンテックとの競争を乗り切るための戦略的アプローチとして、フィンテックの新興企業へのベンチャー投資を活用しているという仮説のもとに、その根拠について検討を行う。これまで、銀行のベンチャー投資がフィンテック企業により重点を置いていることが明らかにされている。その結果、フィンテックとの競合が激化している銀行においては、フィンテックの新興企業にベンチャー投資をする可能性が高いことが示唆される。さらに、銀行は、自社の事業と資産の補完性が高いフィンテック企業をターゲットにしていることが証された。よって、操作変数分析により、ベンチャー投資が投資銀行とフィンテックの投資先との間で業務上の協力や知識移転が行われる可能性が高まることが理解できる。

多文化・多言語対応の安全な大規模言語モデルの構築を目指して

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月11日(月)10:00-11:00

生成人工知能(AI)の利用が世界的に広まるにつれ、AIモデルが地域ごとの文化や言語におけるリスクや懸念を敏感に反映できることがますます重要になっています。そのためには、何がリスクや有害なコンテンツなのかを地域・文化ごとに特定する作業を更新し続けていくことが必要となります。この作業には、AIや情報セキュリティの研究者はもちろん、人文・社会科学の研究者、AIやメディアのプラットフォーマー達や実務家の方や政策関係者たちと継続的に議論できるコミュニティを形成していくことが重要となります。本イベントでは、このようなコミュニティを継続させていく枠組みについてお話します。

新内閣の経済政策: ウィッシュリストと展望

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion共催/Joint Event

2024年11月8日(金)8:00 - 9:15

自民党総裁選挙(9月27日)と衆議院議員選挙(10月27日)の2つの選挙が行われ、新しい首相が選出された。この2回の選挙では、多くの経済政策案が提示され、議論された。ウェビナーでは、採用される可能性の高い経済政策と、採用される可能性は低いが日本経済にとって望ましい経済政策について議論する。

ロボットを「殺す」50の方法(講演者:Jennifer ROBERTSON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月5日(火)10:30-12:00

タイトルの「50 Ways」という言葉は、文字通りの尺度として捉えるべきではない。「50」は、単に「いくつか以上の数」を表す比喩である。ポール・サイモンのヒット曲「恋人と別れる50の方法」(1975年)では、6つの別れ方が提示されている。本講演では、ロボットを「殺す、終わらせる」ためのいくつかの方法と、ロボットが「死ぬ」いくつかの方法を検討する。ここで言う「死」とは、生命維持機能が永続的に停止することを広く定義している。また、「死亡した」ロボットがどのように処理されるかについても考察する。文化的な焦点は主に日本と米国である。人間もロボットも、いくつかの点で電気的な存在であるため、結論では、電気の供給が途絶えた後にそれぞれに何が起こるのかという問題を取り上げる。

東アジア・東南アジアのアイドル・ファンダム文化におけるクィア・ファンタジーの探求(講演者:Thomas BAUDINETTE氏)

イベント予定講演会/Lecture

2024年11月1日(金)14:00-15:30

本講演では、東アジアの確立されたアイドル市場(日本と韓国)と東南アジアの新興アイドル市場(フィリピンとタイ)の両方におけるアイドル・ファンダムの10年以上にわたるエスノグラフィックな観察をもとに、アイドル・ファンダムに関するこの説明に異議を唱える。そして、ファンの主観性が基本的に変容的であることが、周縁化された社会的主体が自分たちを不利にする社会構造を批判するために利用できるアイドルと結びついたクィア・ファンタジーの創造を促すことを主張する。さらに本講演では、アジア全域のLGBTQ+のファンが、アイドルのファンダムをどのようにクィアな空間へと変容させ、そこで彼らのファンタジー作品が、クィア解放という政治的プロジェクトに根ざした国境を越えた連帯を生み出しているのかを解き明かす。

日本におけるクィア人口学――西洋を前提に普遍化されたジェンダー・セクシュアリティに関する知を脱中心化する(講演者:平森大規 教授)

イベント予定講演会/Lecture

2024年10月24日(木)15:00-16:30

本講演では、日本の文脈を考慮に入れつつ、無作為抽出調査で性的指向・性自認を測定するための方法論的研究から得られた知見を紹介する。また、異性愛者の回答者が非異性愛者として誤分類される問題や、量的データにおいて異性愛者と非異性愛者を完全に分けることの難しさについても考察する。さらに、量的調査の性別欄において、ノンバイナリー回答者を捉えるために選択肢「その他」を用いることがあるが、性別を「その他」と選んだ回答者の半数はシスジェンダー女性である可能性があるという最新の調査結果について最後に述べる。


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