東京カレッジ・シンポジウム「人間とは何か?」デジタル革命・ゲノム革命と人類社会を考える - 東京カレッジ

東京カレッジ・シンポジウム「人間とは何か?」デジタル革命・ゲノム革命と人類社会を考える

日時:
2019.10.31 @ 17:00 – 18:00
2019-10-31T17:00:00+09:00
2019-10-31T18:00:00+09:00

東京カレッジ・シンポジウム「『人間とは何か?』デジタル革命・ゲノム革命と人類社会を考える」が開催されました

第一部では、佐野雅己教授(東京カレッジ副カレッジ長)が司会を務め、森川博之教授(工学系研究科)、濡木理教授(理学系研究科)、西垣通教授(名誉教授)、岡本拓司教授(総合文化研究科)、中島隆博教授(東洋文化研究所)がそれぞれ講演を行いました。まず、森川博之教授は「デジタルが産業・経済・社会・地方を変える」と題した講演で、デジタルデータによって得られる新しい付加価値について、スポーツ、コメディ劇場、古紙回収システムなどの事例を挙げて説明しました。デジタル変革には「人間力」が大切であり、人々がデジタルの利点に共感しあうことが重要と述べました。

続いて、濡木理教授は「ゲノム編集の現状と未来」と題した講演で、CRISPR-Cas9を利用したゲノム編集について解説し、お米にB(ベータ)カロテンを蓄積させる、日持ちの良いトマトや切ったとき涙のでない玉ねぎを栽培する、などに応用できることを紹介しました。次に、西垣通教授は「AIの未来と人間の自由」と題した講演で、シンギュラリティ仮説やホモ・デウス仮説と呼ばれる海外の議論も視野に入れ、AIを疑似自律的な主体として捉え、それを人間が活用するという意味を込めたIA(Intelligence Amplifier)として利用していくことが望ましいと提言しました。

岡本拓司教授は、「新しい科学・技術と対峙する社会:近代日本の経験から」と題した講演で、主に盗電問題と原子爆弾を事例に、新たな科学技術の登場が社会や国家に何をせまり、社会や国家はどう対応してきたのかを、国体か国民かという問いから考察しました。重要な価値も放棄・変更・転換されうること、転換後の眼では解釈は変わることを強調しました。最後に、中島隆博教授は「今日における人間の再定義とは」と題した講演で、人間概念の変化の3つの背景として20世紀のユダヤ的転回、テクノロジーの進展、グローバルヒストリーの登場を挙げ、哲学の視点から人間という概念について検討しました。ユヴェル・ノア・ハラリによる「サピエンス全史」(2011)を紹介し、未来に何を望むかによって未来の在り方が変わってくるという考えに基づき、宗教とは異なる「霊性」について考えるべき時が来ていると論じました。

第二部では、佐野雅己教授が司会を務め、講演者が登壇し、パネル討論と質疑応答が行われました。会場からはデータの利用とプライバシーの問題、ゲノム編集を応用した食品の安全性などについての質問が挙がりました。さらに、自動運転などに応用されるAIが「責任」を取れるのかという問題、デジタル革命・ゲノム革命に対する国内外の意識の差、人間の「感情」をどう扱うのかといったテーマについても各分野の講演者から多角的な意見が寄せられ、人類の未来を考える上で極めて重要な討論となりました。

終了しました
開催日時 2019年10月31日(木)17:00-20:00(16:30開場)
会場

東京大学・伊藤謝恩ホール(本郷キャンパス)

申込方法 事前申込制。390名(先着順、参加無料)
言語 日本語のみ
要旨

AIを初めとするデジタル革命は人類社会に変革をもたらしつつある。また、ゲノム編集などのバイオテクノロジーは食料や健康問題の解決につながる反面、将来は人間までをも変えてしまう可能性がある。人類の歴史の中で現在は、地球や人間さえも大きく変えてしまうターニングポイントなのかAIは人類を超えて、人から仕事を奪うのか、デジタル・ゲノム革命の時代の哲学と倫理はどうあるべきか、などの喫緊の課題について、各分野でこれらの問題を真剣に考える研究者が講演し、分野を超えたパネル討論を行います。

プログラム

第一部:講演会(17:00-18:25)
[講演者]
森川 博之 (工学系研究科)「デジタル革命とは何か」
濡木 理 (理学系研究科)「ゲノム編集で何ができるか」
西垣 通 (名誉教授)「AIの未来と人間の自由」
岡本 拓司(総合文化研究科)「新しい科学・技術と対峙する社会:近代日本の経験から」
中島 隆博 (東洋文化研究所)「今日における人間の再定義とは」

第二部:パネル討論、質疑応答(18:40-20:00)
[司会] 佐野 雅己(東京カレッジ)
[パネリスト] 森川 博之、濡木 理、西垣 通、岡本 拓司、中島 隆博

主催 東京大学国際高等研究所東京カレッジ
お問い合わせ tcevent@graffiti97.co.jp

Upcoming Events

開催予定のイベント

平等な権利と不平等な現実: 日本における法とジェンダー平等(講演者:Frank UPHAM教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月7日(水)10:30-12:00

日本は、同レベルの諸外国と実質的に同じように男女差別を禁止しているにもかかわらず、ジェンダーギャップ指数においては146カ国中118位で、ドイツより111位、アメリカより103位も低い。なぜなのか? 日本の文化は、女性が家でおとなしくしていることを求めているのだろうか? もしそうなら、なぜ女性の大学卒業率は男性より高いのか? なぜ女性の労働参加率は高いのか? 女性たちが雇用差別訴訟を起こし、勝訴するのはなぜか? 本講演ではこれらを考察し、その理由について暫定的な--極めて暫定的な--見解を述べる。

世界文学を超えて(講演者:William MARX教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月8日(木)10:30-12:00

少なくとも19世紀以降、世界文学は現実のものとなった。テキストは大陸や文化を越えて旅をし、あらゆる言語から翻訳され、世界中の大学で教えられ、新たなグローバルな規範を形成している。これほど自由に、どこにいても好きな作品を読むことができる時代はかつてなかった。あるいは、そう思えるかもしれない。しかし、それは本当の自由なのでしょうか?単なる心地よい幻想にすぎないのでしょうか?この一見無限に広がる文学の交流には、どのような境界があるのか。本講演は、その限界を探り、文学への新しいアプローチを提案することを目的とする。それは、まったく新しいテキストの読み方、あるいは、かつて存在し忘れ去られた方法かもしれません。
ようこそ、「世界の図書館」へ!

旧約聖書は王国滅亡をどう語ったか:危機と自然をめぐる3つの言説(講演者:Thomas RÖMER教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年5月22日(木)13:00-14:30

紀元前587年のエルサレムの陥落・ユダ王国の滅亡に関連して、旧約聖書(ヘブライ語聖書)には自然や環境に対する異なる言説が見られます。 本講演ではドイツの社会学者アルミン・シュタイルの分析にならい、国家的危機を前にした人々の姿勢を 1) 預言者(危機の後に人間、自然、動物が調和する楽園のような未来が訪れると考える)、2) 官吏(自然災害を神の裁きと捉え、環境に関心を払わない)、3) 祭司(現在の儀式につながる神話的な過去を構築し、人間と自然の調和をめざす)に類型化して読み解きます。生きとし生けるすべてのものとの共存について、聖書は私たちに多くのことを教えてくれるでしょう。

Previous Events

公開済みイベント

ネイチャー・ベースド・マーケットの設計と拡大(Beatrice WEDER DI MAURO教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月23日(水)15:00-16:30

カーボンマーケットやネイチャー・ベースド・マーケットは、信頼性の低さ、高コスト、規模の限界に悩まされており、必要とされる水準には程遠い状況である。本講演では、Beatrice Weder di Mauro教授が、Estelle Cantillon教授とEric F. Lambin教授と共同開発した新しい市場デザインを紹介する。そこでは、自治体など行政区が大規模なプロジェクトを提供し、投資家は土地の所有権を付与することなく、炭素および生物多様性の『配当』を生み出す株式を購入する仕組みになっている。これにより、市場価格は需要を明らかにし、流動性を高める。これらはクレジットベースのシステムと比較して、このアプローチはコストを削減し、信頼性を高め、長期的なコミットメントをサポートする。本講演は、今日の市場を阻む核心的な問題に取り組み、真の環境影響力をもって規模を拡大する信頼できる道筋を提供する。

「来館者中心」の博物館が意味するもの(講演者:Leslie BEDFORD教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月22日(火)14:30-16:00

モノから人への移行を意味した「Being about Something to Being for Somebody(何かについてから誰かのためへ)」という表現は、1999年に『Daedalus』誌に掲載されたアメリカの博物館に関するステファン・ヴェイルの論考の印象的なタイトルである。この表現は数十年を経てもなお、博物館界で共鳴を呼んでいる。それは、博物館が学芸員が定めた情報や機関の目的を優先する在り方から、来館者の体験やより広い地域社会を重視する方向へと変化してきたことを象徴しているからである。ただし、その実践には課題も伴ってきた。
本講演では、長年にわたり博物館の専門家および博物館学の教育者として活動してきたレスリー・ベッドフォード教授が、ヴェイルの言葉の意味を考察し、それがどのように博物館において実践されてきたかについて検討する。ベッドフォード教授が日本で訪れた博物館の事例に加えて、来館者中心の実践に関して、日本の博物館専門家や研究者との一連のオンライン対話を通じて得られた議論の成果を紹介する。そして「来館者中心」という考え方が、今日において、そしてこれからの時代に何を意味しうるのか問う。

黒死病の世界:新たなアプローチ(講演者:Patrick BOUCHERON教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月16日(水)10:00-11:30

1347年からヨーロッパに広がった第二次ペスト大流行は「黒死病」と呼ばれ、史上最大の人口災害として知られている。今日では、葬送考古学、人類学、微生物学、環境科学を組み合わせた学際的研究により、ペスト研究のアプローチは大きく変容した。DNA分析や気候研究の進展は新たな理解をもたらしたが、長期的で世界規模の出来事をどのようにしてグローバル・ヒストリーとして叙述すべきか、という課題は残されている。ペストの流行経路は世界のつながりを示すが、その正確な地理は依然として不明瞭である。それはまるで群島のように不連続でありながらもグローバルな広がりを持つ。

役に立たない機械の目的とは何か(講演者:Dominique LESTEL教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月9日(水)15:00-16:30

ヒューマノイドロボットが注目されているが、実際に人間やその他のロボットと比べてヒューマノイドロボットは何を得意とし、安価であるのかを正確に特定することは難しい。その問題は哲学者にとって大きな課題となっている。本講演では、2017年に市民権を与えられた最初のヒューマノイドロボットであるソフィアを事例として取りあげ、その奇妙な機械が、救世主機械(他の機械の到来を告げる機械)、形而上学的機械(誰が人間か、誰が生きているかなど、根本的な形而上学的質問を私たちに強いる機会)、そして魔法の機械(危険な機械への恐怖と戦うのに役立つ機械)の役割を担うことにより、社会において繊細な位置を占めていることを論じる。

言語における協働──記録から再興へ(講演者:Mark TURIN教授)

イベント予定講演会/Lecture

2025年4月4日(金)13:00-14:30

"本講演では、これまでMark TURIN教授が関わってきた、歴史的に周縁化されてきた先住民族コミュニティとの2つの協働プロジェクトについて議論する。対象となるのは、ヒマラヤ地域および北米先住民社会であり、彼らはそれぞれの言語を保存し、再興するために取り組んでいる。本講演では、「収集(Collect)」「保護(Protect)」「つながり(Connect)」という3つの言葉について探求する。
"

ブリュッセル効果への対応:日本企業はEU-AI法にどう備えるべきか3

イベント予定パネルディスカッション/Panel discussion講演会/Lecture

2025年3月19日(水)12:00-13:00

東京大学では2024年12月11日にEU-AI法の解説とCoPの第一ドラフトの解説、2025年1月15日に第二ドラフトの解説を行いました。本ウェビナーでは最後となるCoP第三ドラフトについての解説と、日本企業が特に留意すべき重要なポイントについて概説します。


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