TOKYO COLLEGE Booklet Series 1
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16 時期の屋形船ですから、まさに窓を閉め切って、密集した空間で大声でカラオケを歌っていたという3密の環境だったことが明らかになっています。 患者Bの胸部CT所見を見ると、両側肺野の胸壁に近いところに、すりガラス様陰影が見られました。このように画像を見れば、第一に新型コロナウイルス感染症を疑うことができることが明らかになっています。 2. 他の病気との関連性 また、この病気は、いろいろな免疫に関わる病気、多臓器に関わる病気であることも明らかになっています。その一つが、小児によく見られる「川崎病様」とのつながりです。イタリアでの大流行から1カ月ぐらい遅れて、川崎病様の患者が見られるようになったことが報告されています。1カ月の遅れという特徴を見ると、どうも抗体産生がこの病気に関与しているのではないかということが示唆されます。小児科の先生方から、いわゆる川崎病とはどうも違うというご意見を頂きましたが、結膜の充血や皮膚病変があることから、何かしらの抗体の関与が疑われるといえます。 そんな中、子どもで四肢末梢の血管炎を合併し、それが壊死に陥るような病変が見られたことから、血栓や凝固異常とのつながりも新型コロナウイルス感染症の特徴としてクローズアップされました。COVID-19は、アンジオテンシン変換酵素Ⅱ(ACE2)といわれる分子を受容体として感染を起こしているのですが、この分子が肺だけでなく血管の内皮細胞にも存在し、内皮細胞を介していろいろな臓器に感染を起こします。その一つが心臓であり、血栓形成や肺塞栓症などの病態を引き起こして、それが急激な悪化に関与しているのです。すなわち、COVID-19は肺に親和性のある

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