25 しかし、COVID-19の場合、患者がそれほど苦しそうでなくても低酸素なのです。それは多分、肺胞の毛細血管の内皮が炎症を起こしたり血栓を作ったりして、酸素を受け取って全身に運ぶことができない状態が一時期見られるからです。しかし、肺胞自体はまだ炎症がそれほどひどくない状態なのだと思います。実際、COVID-19の診療の手引きでも、「CTの画像所見と肺酸素化能がしばしば乖離する」と書かれていて、すりガラス陰影がそれほど強くない状態でも低酸素が比較的進んでいます。しかしながら、実際には進行すると肺胞自体が障害を受けるため、重症になると人工呼吸管理が必要になるわけです。 息をさせるために、口から人工呼吸のための管を入れて呼吸器の設定を行う行為は、トレーニングを積めばある程度できることなのですが、正常な肺胞がほとんど残っていないような重症呼吸不全の管理は、かなりの熟練を要します。このような肺は、残っている肺がとても小さいことから「赤ん坊の肺」(baby lung)ともいわれるのですが、そうした肺に体全体を賄うだけの酸素を取り込もうとして、炭酸ガスを排出するための人工呼吸をうかつに行うと、残っている肺さえも傷めてしまい、不適切な人工呼吸管理がかえって肺を傷害することになります。 そこで、ECMOが登場するわけです。例えば骨折をするとギブスを巻いて1カ月もすれば骨がくっ付きますが、肺は疲れたからといって1カ月休むわけにはいきません。それを実現するのがECMOの装置で、体外に人工肺を作り、血液を心臓の手前から抜いて、人工肺に酸素を吹き付けて酸素を取り込んで赤くなった血液を体に返します。すると、通常の人工呼吸をする必要がなく、肺はほぼ完全に休むことができ、その間に自身の治癒力で回復することができるのです。 ある40歳代の男性は、糖尿病で腎機能が廃絶し、人工透析を受けていました。基礎疾患からすると非常にハイリスクで、ECMOの適応も外れ
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