TOKYO COLLEGE Booklet Series 1
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28 ときではなく、だんだんと増えてくる過程においても逼迫し続けることが分かってきました。 もう一つ大事なことは、波と波との間隔です。北海道は第1波、第2波を既に経験しましたが、第1波が去ったかに見えてもICUには重症患者が長くいますので、積み上がるようにして第2波が増えていきます。波の高さだけでなく、波の間隔が近いと集中治療が逼迫することが分かっています。 それから、ECMOカーが非常に有用だと思います。ECMOは一石三鳥なのです。感染が拡大した地域では、とてもECMOがマンパワー的に対応できないような状況に追い込まれています。そういう所にECMOの専門家がECMOカーに乗って駆けつけ、自分たちでECMOを導入して、感染拡大していない地区まで連れていくことによって、救命率は上がり、マンパワーに余裕ができ、ECMOの患者を減らすことができるので、回転率が上がります。このように平時のときと有事のときで診療体制を柔軟に変えられるシステムを早急に作り上げることが必要です。 グローバル社会において、パンデミックはもはや100年に一度の運の悪い事態ではないと思います。日本の集中治療のレベルは非常に高いですが、それほど余裕はないので、次に大きな波が来ると今の成績を保てるかどうかは分かりません。ですから、集中治療の最後の砦にしっかりと財政支援を行うことが求められます。財政支援は、経済活動の許容範囲拡大にもつながるので、社会全体にとってのコストベネフィットも高いと思います。

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