TOKYO COLLEGE Booklet Series 1
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31 ンストームや抗体産生を抑える一方、感染症自体は悪化させる危険性もあると思うのです。現在、実地臨床の場でこれをどう使うといいでしょうか。 舘田 非常に大事な知見が出てきたと思いました。これまでも新型コロナウイルス感染症の重症例に対して、全身性のステロイドを投与するような報告がありましたが、なかなかはっきりとした成績が出ていなかった中、今回はかなり信頼のできるデータだと感じています。この感染症自体、ご指摘のように、サイトカインと呼ばれるものの過剰産生でサイトカインストームの状態になって、病態の悪化につながります。そんな中、先ほどお話ししたアクテムラのようなIL-6阻害剤は効果があるのか、喘息の治療薬であるオルベスコは効果があるのか、そして今回、全身性のステロイドの投与がもしかしたら効果があるのではないかという知見が出てきました。感染症として今までにない治療の選択肢が要求されるような特徴があるのかもしれませんし、これは非常に大事なテーマとして研究を続けていかなければならないと感じています。 南学 西田先生はご講演の中で、集中治療のベッドを需要に応じて柔軟に増やすことの重要性を指摘されました。広域搬送のECMOカーについてもお話しいただきましたが、それこそ災害医療では被災していない場所に患者を運び出すのに対し、新型コロナ感染症の場合は都道府県間の移動をしてはいけないと国が言っている状況です。ECMOカーなどを使って、感染者が多い地域からそうでない地域に患者を運び出すことは、特に問題ないと考えてもよろしいでしょうか。 西田 むしろ非常に効果的だと思います。ECMOカーは特殊な車で、タイベックスのようなしっかりとした感染防備をしたスタッフが行って、患者を連れて帰ってきます。その受け入れ先も感染防備がしっかりしているところですので、非常に効果が大きいと思います。実際、海外では国をまたいでECMOカーを使っています。日本では都道府県をまたいだ移動は

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