11 幸い、現代の私たちには、私たちの祖先が手にすることがなかった強力なツールとして、デジタル技術があります。在宅のまま、子育てや介護をしながら仕事が継続できる。多様なライフステージやライフスタイルに応じた就労環境・方法が選択できる。ハンディキャップを負い、朝夕のラッシュアワーの通勤や、定型的な職場環境での勤務が困難な方でも仕事ができる。これまででしたら、様々な制約のなかで持てる力を発揮することが難しかった方々でも、社会の一線で活躍いただくことを支援する技術が、広く社会に普及し始めています。 こうしたデジタル技術の長所を伸ばし活用しつつ、私たちの祖先が成し得なかったインクルーシブな社会を実現する。そのためには、従来の都市計画とは一線を画す、新たな都市計画の理念とその実践が求められます。Society5.0が提唱するような、リアルとバーチャルのシームレスな融合にもとづき、空間と時間の両面における多様性(ダイバーシティ)や冗長性(リダンダンシー)に根差した、さまざまな暮らし方や働き方を受け止める都市の形成が求められるでしょう。コロナ禍を、インクルーシブな社会な形成のきっかけとすることが、私たちに課せられた大きな課題ではないかと思います。 以上の問題意識を基礎に、このセッションでは、まず環境工学がご専門の小熊久美子先生、建築史がご専門の加藤耕一先生、公共政策学がご専門の大橋弘先生から、それぞれのご専門を踏まえた話題提供をいただき、その後、私も加えた4名で、「コロナ危機をインクルーシブな社会の形成に結びつけることはできないか」を主題に、総合討論を行いたいと思います。
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