TOKYO COLLEGE Booklet Series 3
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9 人類の歴史を振り返ると、感染症による危機が繰り返し発生しており、そうした危機を経るごとに社会のあり方が大きく変わってきたと思います。それは私たちが社会に対して持っている社会的想像力が変更されてきたからなのでしょう。COVID-19のパンデミックにおいても、私たちがどのような社会をこれから構想していくのかが、あらためて問われているのだと思います。 その際、価値とは何かという問いは、非常に重要になってくると思います。COVID-19のパンデミックではさまざまな課題が浮かび上がっていますが、実は既に知られていた諸問題があらためて露呈してきたように私には見えます。既にわかっていながらも、私たちがうまくマネージできず、手をつけることもできなかった諸問題です。それに加えて、日本も含めた世界各国の対応を見ていきますと、COVID-19に対する意思決定のあり方もまた非常に問われています。そういったことを踏まえて、これからの新しい社会のあり方をどのように構想していくのか。とりわけ、人間の生(ライフ)の価値をどう深めていくのか。これらを問うことが、私たちにとっては喫緊の課題ではないでしょうか。 このセッションには3名の先生方をお招きしました。1人目の武田将明先生は2017年に、ダニエル・デフォーの『ペストの記憶』の翻訳を出版されました。この本は、読んでいきますと非常に身につまされる内容に溢れています。17世紀半ばのロンドンを襲ったペストに対してどのような反応がなされたのかについて、まるで今の私たちをそこに見るような描き方がなされています。17世紀のペスト下においてさまざまな変化が社会に生まれ、同時に、私たちの社会的想像力も変わっていきました。この社会的想像力の変化から、近代が大きくその姿を現していきます。そのデフォーを中心に、武田先生にはお話しいただければと思います。

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