23 3. 大大恐恐慌慌以以来来のの経経済済的的危危機機論論 「1930年代以来の経済的危機」をわれわれは迎えているという議論をする経済評論家がいますが、私は非常に不適切な比較だと考えています。第1に、今起きているコロナ危機は経済が直接的な原因ではないからです。第2に、1930年代の恐慌のときはまだ、古い金本位制に由来するような金融・財政規律が実際に生きていて、政府の機敏な財政出動をしばしば阻害していました。しかし、今はそういう制約は全くありません。従って、目の前にあるのは、権力が民衆に活動制限をする代わりに補償をするのか、それとも自粛を要請するだけで補償しないのかという、危機に際して政治が責任を取るか取らないかという分岐があるように私は考えています。第3に、証券価格や原油先物の急落は昨年から想定されていたことであって、われわれの目の前にあるのは、金融市場の破調という問題ではなく、普通の民衆の生命と生活、生命・人生の実質合理性が危機にさらされているという問題なのです。 4. ススペペイインン風風邪邪ととのの比比較較 それよりもむしろ、スペイン風邪との共通性の方がはるかに今のわれわれにはリアルに目に映ると思います。まず、人の大量移動に伴う急激な世界的感染である点で共通しています。それから、スペイン風邪という名前自体が、原因を安易に他国のせいにする言説が跋扈(ばっこ)した点も現在と非常によく似ています。 ただし、無視できない相違があります。スペイン風邪と現在との大きな相違は、スペイン風邪のときは経済的・人的損失が第一次世界大戦と戦後の混乱の陰に隠れて必ずしも明晰ではなかったのですが、今は非常に明瞭
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