TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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12 ただけであり、やはりコロナ禍が終われば元に戻るかもしれないということを示唆しています。 宮宮川川 私が注目しているのは、企業側についてです。特に、企業が倒産や休廃業の形で経済から退出していくメカニズムについて関心を持っています。業績があまり芳しくない企業がより高い確率で倒産や廃業に至ることが想像されると思いますが、実際にコロナ危機が生じる前のデータを見てみると、こうした退出のメカニズムがはっきり確認されます。ここで関心事になり得るのは、コロナ危機以降の時期において、こうした退出のメカニズムがどのように機能しているかということだと思います。実際にデータを眺めてみると、特に4~5月においてこうした退出のメカニズムが変容しているように見受けられます。もう少し具体的に申し上げると、業績の良し悪しという点で企業パフォーマンスにもいろいろな違いがあるわけですが、コロナ禍前のパフォーマンスの高低にかかわらず、特定の業種、例えば宿泊業や飲食業の企業が面的な退出圧力を受けているという印象を受けています。 川川田田 私が関心を持っているのは、労働市場に与えた影響です。4月までのデータを見る限り、コロナ禍の影響は、例えばリーマンショックなどと比べて大きな違いが見られます。特に、非常に幅広い職種や産業の求人が低下している点が大きな特徴だと思います。中でも内需系の産業である飲食業や宿泊業などにおいても、求人数が大きく低下しています。また足元では、雇用関係自体は継続しているが一時的な就業停止状態にある休職者の急増も観察されます。以上の点は、コロナ禍の特徴を考えると自然なことではあるのですが、これまでの経済不況とは大きく異なる点だと思います。 また、コロナ危機の影響は既存の不況と比べて長続きしてしまう可能性が否定できない点も懸念されます。ソーシャルディスタンスのため、飲食

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