TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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24 星星 川田さんのお話では、一部の産業では今後たとえ景気が回復したとしても雇用の回復につながらないかもしれないということでした。その点は別にコロナ危機に限ったことではなくて、他の経済危機でも見られた現象ではないでしょうか。例えば、世界金融危機の後で金融機関が破綻して、金融業の職が多く失われ、いまになってもすべては回復していないと思います。このところ、アメリカではジョブレスリカバリーといって、景気は回復しても仕事が増えないのが当たり前のようになってきています。こうしたことはコロナ危機前から起こっていることで、コロナ危機特有ではないと思うのですが、いかがですか。 川川田田 ご指摘のとおり、雇用の回復が弱いという現象はこれまでも繰り返し見られてきました。日本においてもとくに賃金に関して、十分に回復していないことが指摘されています。その点ではコロナ危機もリーマンショックのような現象も同様なのですが、コロナ危機では飲食や宿泊業など対面型のサービスを行う産業が大きな影響を受けている点に非常に大きな特徴があると思います。 なぜなら、これらの産業は、途上国との競争の激化や技術進歩などの経済行動の変化の中でも、非常に安定した就業機会をこれまで提供してきたからです。例えば米国では、相対的に高賃金の仕事を得にくい労働者に就業機会を提供してきたことが指摘されています。日本においても、パートタイムやアルバイトの労働者を含む非常に多様な労働者にとって重要な就業機会となっていました。このような相対的に弱い立場にある人々が所得を得ている産業がショックの直撃を受けてしまった点が、これまでと異なる重要な点だと思っています。ですから、今回のコロナ危機に関しては、これまでの不況よりも経済格差の拡大に直結する可能性があるのではないかと考えています。

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