25 星星 弱い立場の労働者の雇用が失われたことがコロナ危機の大きな特徴であり、金融危機などとは異なるということですね。ただ、弱い立場の人が雇用を失うのも、大きなショックのときに頻繁に見られたことではないでしょうか。例えば世界的競争の激化で海外から安い製品が入ってきて職が失われたり、もっと大きいのは技術進歩で今までの職が失われたりすることがあったと思うのです。 技術進歩や世界的競争激化で職を失った人たちがサービス業に移って、今回のショックで職を失うことになったということではないでしょうか。その意味で、大きな経済危機で弱い立場の人の雇用が失われて経済格差が拡大するのは、コロナ危機で新しく起こったことではなく、今までずっと起こってきた現象ではないかと思うのですが、どうですか。 川川田田 例えば産業内や企業内で見ると、相対的に競争力が弱い企業や社内で生産性が低いと見なされた人たちが仕事を失う傾向がこれまで見られていたと思います。この点に関してコロナはどうなのかというと、足元ではデータの制約があってなかなか見られていないのが現状です。産業レベルのデータは1カ月遅れぐらいで政府から出てきますが、企業レベルや労働者レベルのデータはまだ提供されておりません。これに関してはより詳細にデータを見ていく必要があると思います。 ただ、今回のコロナ危機で留意すべきなのは、産業レベルで見たときに、ある種のセーフティネット的な役割を果たしている産業が直撃を受けてしまった点は、これまで見られなかった現象だということです。実証研究においても、例えば米国では男性よりも女性の方が影響を強く受けているということが幾つかの研究から指摘されています。日本も同様で、既存の不況では例えば製造業や金融業など、どちらかというと男性の多かった産業が直撃を受けましたが、今回は対面型のサービス業への影響が特に強いので、女性が大きな影響を受けている点はこれまでに見られなかった現象
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