TOKYO COLLEGE Booklet Series 4
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35 もう一つは、医療崩壊になると助かる人も助からなくなります。今回のCOVID-19対策でもよく語られたと思うのですが、流行の山を抑えて先に延ばすことによって、病院のキャパシティ内に患者数を収めて、救える命を救おうという戦略を取っています。病院がどれだけ混んでいるかというのは民間では判断しないので、政府が抑えなければなりません。ですから、政府の対策が必要になってきます。 しかし、全てを合わせた私の評価としては、大したものは得ていないと考えます。なぜ得ていないかというと、われわれは、今は感染を抑えられているわけですけれども、第2波が来ることが指摘されていて、われわれは半年か1年、問題を先送りしただけの状態だからです。新しい流行シナリオが出たときに、以前と変わらないとか、終わったのではなかったのかという反応もあったと思うのですが、そういう意味で大して問題を解決していないということが、GDPで0.5%の利益しか得ていないことに表れています。 星星 自粛が個人の効用最大化の結果だったかどうかについては、第3回のディスカッションにも関係があると思います。もし個人が最適と考えて自粛を行ったのであれば、政府が自粛を要請する必要はなかったわけですが、多くの人が要請されてはじめて自粛したということは、岩本さんがおっしゃったように外部性があって、自粛の個人的便益と社会的便益が離れることになり、政府の介入が必要だったと言えると思います。ですから、政府の要請が必要となり、みんなが個々人で考えるよりももう少し自粛する結果になったのではないかと思います。

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