31 1. 「「不不要要不不急急」」のの裏裏側側ににああるる線線引引ききとと階階層層化化 私はお二方とは少し変わったところから考えてみようと思っています。私自身は環境社会学や環境倫理から、特に個別具体的な人々の人生の中でどのようなことが起こるのかということをずっと追い掛けてきました。つまり、データとシナリオの手前です。 私たちは今、感染者数などの数字を日々気にしていますが、一人一人は数字ではなくて人であって、その人たちがどういった生き方の中で苦しみを持っているかということを考えておかなければなりません。また、リスクの換算で考えると、勝手に自分自身の判断で「このリスクはこういうリスクだから、あの人の行動は良くない」と言ってしまいがちです。そのようにリスクを個人化し、自分にも相手にも自己責任を強いて判断するのではなくて、起こっていることの断片ではあっても、個別具体的な物語から、私たちが何に直面していて、何が未解明のままで、大きな不確実性とともにどんな確実性を手に入れなければならないのかということを考えてみたいと思っています。 そもそも気候変動に伴って大きな社会変革の波が訪れ、不確実性の中で確実なものを得られるような社会をつくっていくため、データと科学的根拠に基づく人間と社会のコントロールが進んでいます。そうしたことを、人々はどう考えながら生きればよいのか、何を目標にすればいいのか、何を倫理として自分のこととして受け止めていけばいいのかということが重要なポイントになっているという背景があります。 まさにコロナ禍においては、データと科学的根拠に基づく人間と社会のコントロールが恐らくかつてないほどに、気候変動が推し進めるよりもさらに速いスピードで、健康を求める人々の動きによって実現しています。それと同時に、生物学的・生理学的な条件による差異や価値付けが進んで
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