TOKYO COLLEGE Booklet Series 6
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33 渡渡部部 この数カ月でいろいろなことが先生方の分野で起こったと思います。この数カ月間の経験が先生方にとってどうだったか、具体的には新しい発見や、今までなかなか進まなかったけれども進んだこと、あるいはなかなか進まないことについて、今の時点でのご見解を伺えればと思います。 大大江江 やはり平時から感染症データを収集・活用する体制の整備をあまり考えてこなかったことに改めて気付かされました。例えば2011年の東日本大震災のときに電子カルテが流出したことがあって、大規模災害に備えてデータのバックアップ体制を取らなければならないということが指摘されて、BCPの体制ができたわけですが、こういったパンデミックも災害対策の一環として普段から捉えておかなければなりません。情報システムやデータに関しても、パンデミックに備えた取り扱い方をもう少し考えておかないといけなかったと改めて感じました。 また、データ管理の面ではないのですが、医療の現場としては診療体制をどんどん変えていかないと間に合いません。しかし、従来の医療体制がなかなか迅速に対応できない状況だということにも気付かされました。一方で、既存の感染症を目的としていない情報収集システムやレセプトデータなどの既存のデータを、いかにこういった課題に迅速に転用するかということが求められていると改めて感じました。 また、HER-SYSというシステムを眺めたときに、医療の情報を取り扱うアクターがあまりにも多くて、自治体、保健所、診療所、民間病院、大学病院、そして今回の場合は個人が一つの重要なアクターになっていると思うのですが、それぞれのところから出てくるデータリソースがばらばらに入力され、ばらばらに管理されています。そこにさまざまなアプリやデータ入力システムが提案され、ばらばらに動くことで、もはや統合が難しくなってしまっています。こういったものをこれからどう解決していくのかということが大きなテーマだと感じました。

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