TOKYO COLLEGE Booklet Series 6
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6 ははじじめめにに 新型コロナ感染症の拡大はWHOによる3月のパンデミック宣言以降半年たっても収束する気配を見せず、世界中で医療供給体制の逼迫の危機をもたらすとともに、経済活動を停滞させ、人々の生活の基盤を脅かしています。有効な治療法やワクチンの開発が急がれる一方、感染症に関して今何が起きていて、それが経済活動にどのように影響しているのかについてAIなどを用いてシミュレーションを行うことで、感染症防止と経済活動を両立させようという試みが世界中で行われています。しかしそのためには、感染症や経済に関するリアルタイムのデータが必要になります。 パンデミック以降、日本でも多くの科学者がこのようなデータを求めて様々な活動をしてきましたが、その多くは必要なデータにアクセスすることができないという残念な結果に終わったことで、我が国のデータ利活用に深刻な問題があることに気付かされました。これらの課題を掘り下げていくと、データを扱う立場の政府・自治体も企業も大学等の研究機関も、データガバナンス体制が十分整備されていないことが背景にあることが分かります。 一方、コロナ感染症拡大への対策として発せられた緊急事態宣言の中で、経済社会が大きく変容し、デジタルトランスフォーメーションが加速し、新たなデータ利活用の機会も生まれていることには注目すべきです。このような変化が、経済社会の不可逆な変化を生み出し、ニューノーマルといわれる新たな経済社会を生みだすという側面は見過ごせません。社会がその機会を最大限生かすことで、新たな価値創造やデジタル経済を発展させることが期待できるのです。

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