TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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19 はなく、今までオンライン消費をしていた人がより多くオンラインで使うようになっただけのことだという報告がありました。 企業を見ると、こうした大きなショックが起こって景気が悪くなると、破綻して退出する企業がある一方で新たな企業が入ってくるという動きは普段からあります。業績が悪くなった企業が退出して、業績のいい企業が大きくなることで経済は成長していくのですが、今は企業退出のメカニズムが弱ってきているのではないかという指摘がありました。例えば宿泊や飲食などの特定の産業では、業績にかかわらず全ての企業に退出の圧力が加わっていますし、他の産業を見るとむしろ、退出が通常時よりも減っているため、業績の悪い企業が生き残っている部分も大きくなっています。そういう二つの意味で、どうもコロナショックでは企業退出・参入のメカニズムが弱っているのではないかという指摘です。 それから、雇用・労働の面でも、いろいろな産業で職が失われています。特に、飲食、宿泊、サービス業といった、これまでグローバリゼーションや技術革新、機械化の悪影響を受けにくかった産業で雇用が失われています。その点でコロナショックは、雇用に非常に深刻な影響を与えているのではないかという指摘がありました。今起こっている変化は永続的なもので、景気が回復しても雇用は戻らない可能性があるということも指摘されました。 最後に出てきたのは、感染症拡大を防ぐためには経済を縮小する必要があるけれども、経済を縮小するのも大変だという、生命と経済のトレードオフが、これほどの規模で問われたことはないという点です。当然どちらかを選べるという話ではありませんから、どこかでバランスを取らなければならないのですが、バランスをどこで取っていくのか。経済を重視し過ぎてもいけないし、生命を重視し過ぎて経済を壊してしまってもいけないので、そのバランスが重要であるという指摘でした。

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