TOKYO COLLEGE Booklet Series 7
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49 多分、私は子どものころに真空管でラジオを作った最後の世代だと思います。それがトランジスタになり、ICになりました。あるいは、私はアマチュア無線に凝っていたので、極超短波を使えば月に反射させて通信ができるかもしれないなどと中高生のときに考えていました。気が付いたら極超短波よりもっと波長の短い光の研究者になっていました。このように、私達の世代は、時とともにデジタル・トランスフォーメーションの技術が進歩するさまをまざまざと肌で感じてきました。最初に作ったパソコンに搭載されているメモリは16キロバイトしかなかった。それが、現在私が普段使っているものは1テラバイトほども入っており、情報量が全く違います。情報の使い方も日々の生活の中でまるっきり違ってきているのです。私たちが持っているスマートフォンは、初期のスーパーコンピューターを凌駕する計算速度です。 このように、私が物心ついてから現在に至るまでの間に、人々の生活は大きく変わり、物事が進む時間のスピードも大きく変わってきました。それに対して社会のシステム、合意形成のプロセスはそれほど劇的にスピードアップしないので、追いついていない部分がたくさんありそうです。あるいは、先に気が付いた人が早い者勝ちして一人勝ちしてしまうという危ない状況になっているのかもしれません。このような問題に上手に対応するためには、どうしても多様な知を組み合わせていかなければなりません。 科学技術はもちろん大切ですが、それだけですべては解決しません。社会システムも重要です。社会システムといえば、法律などのことがイメージされるのですが、もう一つ大事な要素は経済メカニズムです。私は経済学者ではないので、経済メカニズムについて非常に狭い捉え方をしていると思うのですが、多くの人が参加したいと思うメカニズムは経済でしょう。この三つをうまく連環させなければなりません。総長になって最初の2年間はそんな話をしていました。

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