TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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12 ほどの震災予防調査会の研究部分を引き継ぐ形で地震研究所が東京大学にできました。 1935(昭和10)年に寺田寅彦先生が書かれた地震研究所の碑文には、「本所永遠の使命とする所は地震に関する諸現象の科学的研究と直接又は間接に地震に起因する災害の予防並びに軽減方策の探究とである」とあります。 地震というとどうしても地震予知のことが出てくると思うのですが、地震予知に関しては1965年に国の地震予知研究計画が始まり、5カ年ずつで今でも続いています。その後、1977年に駿河湾地震説が唱えられ、東海地方で地震が切迫している恐れがあるといわれました。その翌年には大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定され、気象庁内に地震防災対策強化地域判定会(判定会)ができました。判定会では、東海地震に関して計器を100以上置き、いわゆる前兆現象を常にモニターしていました。 大震法の仕組みとしては、気象庁が24時間モニターをして、異常が発見された場合は、東大の教授を中心に5人程度で構成される判定会が気象庁長官の下で開催されます。異常現象があったときには判定会が判定をし、気象庁長官に知らせ、気象庁長官は内閣総理大臣に報告して、内閣総理大臣が警戒宣言を出します。警戒宣言が出ると、強化地域の東海地方では交通や活動を停止します。先日の緊急事態宣言のようなものが発令される仕組みが法律でできているのです。これが1978年から50年近く動いています。 その間に地震学も進歩し、私が会長をしている国際地震学・地球内部物理学協会は、「確実性の高い地震発生予測に用いることができる前兆現象は見つかっておらず、地震の発生時期や場所・規模を狭く特定する決定論的な地震発生予測は一般的には困難であり、予測には確率的なものが用い

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