14 者は約1万8000人に上り、加えて東京電力福島第一原子力発電所の事故もありました。 このとき問題になったのは、まず事前評価でした。大きな地震は起きるのか、原子力発電所にどういう津波が来るのかという事前評価の不確実性がありました。不確実性というのは、先ほど南学先生がおっしゃったuncertaintyと同じです。これには2通りあると考えられています。一つは偶然的なばらつき、物理現象が持つ避けられないばらつきです。もう一つは認識論的不確実性、われわれの知識が不十分であることによる不確実性です。つまり、学問が進歩すれば減らせるのです。偶然的なばらつきは自然現象に存在することなので少なくすることはできませんが、認識論的不確実性は学問が発展すると変わるので、時代とともに変わる不確実性です。 次に問題になったことは、緊急時の情報伝達です。例えば放射性物質の拡散シミュレーションやシングルボイス(ワンボイス)の問題です。 それから、社会のリテラシーです。いわゆる「想定外」や「ゼロリスク」といわれたようなものです。社会における知識の受け入れ側のリテラシーという問題が出てきました。 例えば、東京電力福島原発の事故調査・検証委員会では、津波想定の問題点として次のようなことを挙げています。東京電力は、津波評価技術に基づいて福島原発の想定波高を5.7mとしました。その後、津波リスクの再検討を行い、15mを超える想定波高を得ました。同年、われわれが論文に記載した貞観津波の波源モデルを基に東電が計算したところ、9mを超える数値を得ました。しかし東電は、前者の15mを超える想定波高は仮想にすぎず、後者の9mは、波源モデルが確定していないなど十分な根拠がある知見とは見なされていないとして具体的な対策を取りませんでし
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