15 た。実際に起きた津波は15mでした。私たちが正しかったということを言っているわけではなく、知識というのは徐々に発展していくものなのです。 それで震災後どうなったかというと、地震調査委員会で長期評価を行っています。私は委員長と部会長も務めていたので、南海トラフ、相模トラフ、千島海溝、日本海溝についてまとめたのですが、震災前の反省に基づき、新たな方針を三つ立てました。 一つ目に、それまで考えられてきた固有地震モデルに固執することなく、地震の多様性を考慮した評価を試みることにしました。その中には過去に発生した地震よりも大きなものも含まれるでしょう。まさに2011年の反省に基づいています。 二つ目に、不確実性が大きな情報も、これに伴う誤差やばらつきを検討した上で評価に活用することにしました。 三つ目に、データの不確実性などで解釈が分かれる場合には、複数の解釈について併記する、いわゆる両論併記するという方針で、現在は長期評価を行うようになりました。 原発事故のときに放射能拡散という問題がありました。放射能拡散の問題は地震学というよりも気象学の分野なのですが、震災から1週間後に気象学会理事長が会員に、「当学会の気象学・大気科学の関係者が不確実性を伴う情報を提供、あるいは不用意に一般に伝わりかねない手段で交換することは、いたずらに国の防災対策に関する情報等を混乱させることになりかねません。防災対策の基本は、信頼できる単一の情報を提供し、その情報に基づいて行動することです」というメッセージを発しました。つまり、シングルボイスが重要だとこのときに言っています。
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