20 このことを少しまとめてみると、現実の科学と人々の持つ科学のイメージとの間にギャップがあります。現実の科学は、常に作動中です。しかし、人々の持つ科学のイメージは、書き換えが終わってしっかりしたもの、つまり事後の知識です。また、現実の科学はつくられつつあるのですが、人々は科学が厳密で常に正しい客観性を持った知識だと思っています。そして、現実の科学の中には答えの出ていないものもあるのですが、人々はいつでも確実で厳密な答えが科学の側にあると思っています。 分かっていることとそうでないこと、そして分かりつつあることがその間にグレーゾーンとしてあって、分かりつつあることはどんどん確実なものになっていくのですが、知識をつくりつつあるときには、前に言ったことが間違っていたということは十分あり得ます。それは現実の科学としては当然のことなのですが、そのことが理解されていないと、いろいろと問題が発生することが考えられます。その点で、科学の持つイメージとして作動中であるということをもう少し科学教育でも伝えるべきなのではないかという主張もあります。例えば、英国のGCSEの教科書では、作業中の科学であることを伝えています。つまり、私たちが理科教育であまりにも答えの出る問題ばかりを解いていると、科学は「いつでも確実で厳密な答え」を持っているというイメージが強化されてしまうのではないかと考えられます。 2. リリススククココミミュュニニケケーーシショョンン 続いて、リスクコミュニケーションに関してです。確率概念からリスク概念に移行するときには、必ず価値判断が入ります。つまり、何か守るべきものがあって初めてリスクという概念になります。生態系を守るのか、
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