TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
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34 ったので、もう少し長い目で見れば確かにそうした地震は起きていたわけです。 熊本地震のときは実際二つの断層があり、一つの断層で地震が起き、それによって翌日に隣の断層で地震が起きたのです。ですから、前震と言えば前震なのですが、どちらかというと地震が起きたことに誘発されてまた地震が起きたようなものなので、前震・本震・余震という考え方が根底から覆ったわけではないのです。多分、地震学者はみんな同じ考え方だと思うのですが、なかなかそれが一般的にきちんと理解されていないのかもしれません。 大大竹竹 確かに地震は非常に難しい現象ですが、みんなが経験するものですから、誰もが何か言いたくなります。ですから、説明がより難しいのだろうと思います。 それから、病気というのはかかって初めて我が事になりますが、かかるまではそう思いません。私自身もそういう経験があります。医学の世界では予防医療、先制医療というのでしょうか、病気になる前にいろいろな形でリスクを軽減していこうとします。南学先生は臨床をされていますが、こうした難しさについていかがお考えでしょうか。 南南学学 全く先生のおっしゃるとおりで、健康の自分事化が非常に重要な問題だと認識しています。現在、東京大学では、センター・オブ・イノベーション(COI)ストリームの一環で、長寿をできる限り保つために自宅で自分の状態をフィードバックし、健康のことを自分事化してきちんと保つことによって、従来入院していた人は外来に出て、外来の人は自宅に、自宅の人は健康に過ごすことを目指すプロジェクトをしています。実際、自分の体のことは、病気になってみないとなかなか感じられないものです。これは恐らくサイエンスだけの問題ではなく、行動科学などいろいろなと

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