TOKYO COLLEGE Booklet Series 8
51/66

49 を持つ人が多様なパースペクティブを持つ人を入れ込むように作ることが一つの教訓として出てきたと思います。 国際的な共同研究に関しては、私は研究者なので、この問題を考えるときには必ず自分の専門分野の科学コミュニティを基礎として考えます。つまり、私は日本の科学技術社会論(STS)のコミュニティの中にいて、日本における科学的助言をどうやってつくるかということを考えなければなりません。そのときに何が支えになるかというと、国際的なSTSコミュニティの人たちの意見なのです。 夏に国際科学技術社会論会議があり、米国やケニアの事例など、COVID-19によって科学と社会がどのようになっているかなど、多くの報告を聞きました。そこで特別なシンポジウムが幾つか組まれたのですが、「新型コロナウイルス感染症はただの病気ではない。生態学的な危機や経済学的な危機、人種差別、病的な嫌悪(フォービア)と組み合わさっていて、資本のグローバリズムや組織の在り方を巻き込んで課題を提示している」とSTSコミュニティの人が伝えてくれました。それが支えになっています。ある意味では横山先生がおっしゃっているグループボイスと少し似ていると思いますが、私自身は自分の所属する科学者コミュニティの国際的なつながりが、自国における科学と政治を考える上での基本的な支えになっていると考えています。 大大竹竹 そうですよね。現実の政策決定のときには制度の違いは非常に重要ですが、逆に言えばいろいろなことを共有することは重要だと思うのです。そうした重要性は、専門家同士でも国を超えて話をしていますが、それをどうやっていくかという問題はまだまだこれからの課題だと思います。

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る