遺産研究
遺産研究の領域はこの数十年間、世界各地で発展し続けています。あわせて個々の建造物であれ、地域における建造物群であれ、遺産の公開にむけたキュレーションも盛んに行なわれています。遺産の認定には、自治体をはじめ国の機関や全国的な組織、そして国際機関が重要な役割を果たしてきました。国際レベルでは、ユネスコによる世界遺産および「世界の記憶」の認定・登録が特に重要ですが、主張を異にする国と国(あるいは国の指導者と利益集団)の論争の焦点にもなっています。
この分野の研究はほとんどが「西側」の遺産を対象としてきましたが、21世紀になると、「西側以外」から、あるいは西側でかつて周縁化された集団から批判の声が上がり、何が遺産であるのか、遺産を認定し保存する役割を誰が担うべきかについて、従来とは違った見解が提起されました。日本に限らずどこの国でも遺産の指定には長い歴史があり、それは遺産の学問的研究が広がるずっと以前にさかのぼります。また他の国と同じく日本でも、いわゆる「難しい遺産」(帝国主義や植民地支配、戦争に関係する遺産)を認める動きには国内外を問わず大きな論争がつきものです。
このプロジェクトの具体的な活動は、共同研究への参加者の関心を反映するかたちで進めます。まずは遺産研究に関する基本的な学術文献を読み、議論していきます。将来的には共同研究の経過報告、研究発表会の開催、成果物の刊行などができればと考えています。