イタリアの取り組みから読み解く精神保健医療福祉における「哲学的対話実践」の可能性
研究要旨
イタリア(おもにトリエステ)では、現地の精神保健センターなどに関わっている医療従事者や当事者たちとともに、いわゆる治療目的とは異なった文脈のなかで精神保健医療福祉領域のうちに哲学的対話実践が導入されてきた。この取り組みは、同領域における今後の重要な参照軸と なるばかりか、哲学プラクティスの今後の展開を考えるうえでも極めて意味のある取り組みと言える。そこで本研究では、イタリアの医療従事 者や哲学プラクティショナーなどとの綿密なネットワーク(研究体制)をもとに、精神保健医療福祉領域における哲学的対話実践の可能性を根本 的に吟味し、国内の精神保健医療福祉の現場に見合った哲学的対話実践モデルの構築を目指す。
研究目的
本研究の目的は、1980年代以降活発になりつつある「哲学プラクティス」の考え方に基づき、 (1)精神保健医療福祉領域における「哲学対話実践」の〈非治療的(non-therapeutic)〉アプローチの可能性を、心理療法などによる〈治療的〉 アプローチとの比較をとおして理論的に検証するとともに、 (2)実際に地域の精神保健医療福祉施策のうちに哲学的な対話実践を挿し込み、独自の精神保健医療福祉活動を展開しつつあるイタリア(とくに トリエステを中心とした北イタリア)での試みの詳細を、現地の医療従事者や当事者、家族会、さらには哲学研究者やプラクティショナーなどとの綿密なネットワークをもとに明確化し、その可能性の問い直しも含めて日本国内に紹介する。 (3)そして、上記の成果をもとに、最終的に日本国内の現状を踏まえつつ、国内の精神保健医療福祉の現場に見合った「哲学的対話実践」モデルの構築を目指す。