少年非行のメディア表象と社会認識
「少年犯罪」という言葉にどのような印象がありますか?「怖い」「暴力的」「自分勝手」など、色々なイメージがあるかもしれません。2015年に報告された内閣府の調査によると、「少年による重大な事件が増えている」と回答した人が78.6%で、2010年度に同様の回答をした人の割合(75.6%)から増加傾向にあると示されています。しかし、少年事件件数は、この20年間で劇的に減少しています。 「少年犯罪は凶悪化・増加している」という社会認識が広く共有される一方、この認識が少年犯罪の実情と乖離することは、法社会学や犯罪社会学の研究分野でも課題となってきました。誤った社会認識が非行少年への対応や立ち直りにおいて障害になるとの指摘もあります。 なぜ実際のデータと相反する印象を多くの人たちが抱いているのでしょうか。これは少年犯罪だけでなく、HPVワクチンや原発事故後の福島など他のテーマでも同様の事象が確認できています。ある特定のテーマ・物事・対象への固定化したイメージが、人々に不安をかき立てると考えられ、例えば社会学ではモラル・パニックという理論で説明されてきました。 これまでの研究では、そうした少年非行に対する構築されたイメージ(ステレオタイプ)や誤った社会認識、モラル・パニックなど社会における影響、少年を含む子ども期の概念の変化について分析しています。今後は、正しい理解に基づいた少年非行へのイメージの再構築には、どのような情報発信や対話が必要かということも検討していく予定です。具体的には、近年の情報メディアの発展に伴うグローバル化・伝達手段の多様化のなかで、情報の発信者・受信者の双方の視点について考察を進めるとともに、少年非行の元当事者・関係者のさまざまな視点を取り入れ調査していきます。