4年目の春
2019年2月に設立された東京カレッジは、この4月に4回目の新年度を迎えました。2月の「卒業者第1号」と題するブログにも記したように、過去3年余りの間、多くの方々から力強いご支援とご協力を頂き、東京カレッジは順調に成長してきました。
この4月1日現在で、カレッジに所属する若手研究者は、准教授1、特任助教2、ポスドク研究員12、特任研究員5の合計20人となりました。1年前の4月と比べると、ポスドク研究者の数が6人増加しています。今年度中にさらに3人のポスドクが海外からやってくる予定です。この写真をご覧頂けば、様々な背景を持つ研究者とその活動を支える職員が集う東京カレッジの現在の様子が一目でお分かり頂けるでしょう。国際的な人の移動が元に戻れば、来年はここに海外からお招きするシニアの卓越研究者が何人か加わっているはずです。
2020年3月、東京カレッジが本格的に海外からの研究者を迎えようとしていた正にその時、COVID-19感染症の拡大によって、人の移動を伴う学術交流が難しくなってしまいました。その時点ですでに20人近いシニアの卓越研究者の招聘が決まっていたのですが、それらはすべて延期となりました。国際交流を重要な使命とする東京カレッジにとって致命的ともいえる事態が突然生じたのです。
しかし、この予期せぬ困難な状況を乗り越え、私たちは3年任期のポスドク研究者を何とか順次迎え入れることができました。それはひとえにカレッジの事務職員たちの尽力のおかげです。招聘チームの職員たちは、赴任予定の研究者とはもちろんですが、文部科学省、外務省や海外の大使館や領事館、入国管理局などの関係省庁、空港の検疫所、隔離先の宿舎、さらには学内の関係部署などとメイルや電話で数えきれないほどのやり取りを重ね、多くの書類を作成し、試行錯誤の末に何とか若い研究者たちの招聘に成功したのです。
実際に研究者がやってきた後も、彼/彼女たちがスムーズに研究生活を始めるためには、様々な支援が必要です。住居の選定や区役所や銀行での所定の手続きに付き添うことはその一例ですが、事務職員たちは、このような種々の支援活動にも誠実に取り組んできました。今日、東京カレッジに20人の優秀な若手研究者(そのうち、日本国籍者は3人だけです)を迎え入れることができているのは、事務職員たちの献身的な働きがあったからです。私は彼/彼女たちに心から感謝しています。
東京カレッジ・ウェブサイトのメンバー頁をご覧頂くと、事務職員の似顔絵が掲載されているのにお気づきになるでしょう。他部局のウェブサイトを見ても、事務職員の名前や顔写真は掲載されていません。事務職員は目立ってはいけない、あくまでも黒衣だという考えによるのかもしれません。しかし、彼/彼女たちは、一人一人が間違いなく東京カレッジの重要な一員です。研究者と事務職員は東京カレッジの事業を円滑に進めてゆくための両輪なのです。ウェブサイトをデザインするときに、彼/彼女たちを紹介しないという選択肢は私にはありませんでした。
2019年4月に初めて東京カレッジに配属された2名の事務職員が、この3月末で他部局に異動となりました。招聘チームの責任者だった齋喜千尋さんと会計・経理の面でカレッジの運営を支えて下さった小林将夫さんです。私にとって、このお二人はカレッジ創設以来の本当に重要な仲間でした。お二人には様々な場面で大いに助けられました。大学内部の慣例だとはいえ、3年でお別れとなったのは本当に残念でした。お二人が東京カレッジでの経験を活かして、新しい部署で活躍されることを期待しています。
4月からは新しく二人の優秀な事務職員をお迎えしました。ウクライナの研究者緊急受入れのための作業などもあり、赴任早々からお二人にはずいぶんご苦労をおかけしています。東京カレッジは、東京大学の他の部局ではできないことを実現するために設計されました。職員が慣例や伝統にとらわれることがあってはなりません。東京カレッジをさらに魅力的な研究機関とするために、自分たちがアイディアを出し、それを実現するための仕事の進め方を自分たちで考えねばならないのです。その意味では厳しい職場かもしれません。しかし、いま東京カレッジに所属する職員は、全員がやりがいのある場所で働いていると感じていると私は信じています。
海外渡航の制限が緩和され、これからは海外からの研究者・知識人の来訪が相次ぎます。5月には、2年ぶりに会場を設営しての講演会も企画しています。職員の支援を必要とする場はますます増えることでしょう。これからの1年も志高い職員たちと力を合わせ、色々と新しいことに挑戦してゆきたいと思います。